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  • 2016.06.21 Tuesday
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店番日誌ディープ・花と鳥と星と・後編

窓から漏れる光が弱くて、ああ今日も雨なんだなと。
ホシハナビレッジで迎えた二日目の朝も、天気はあいにくでした。
やはり、お祭りは見られないかもしれない。
それでも、なんとなく幸せな気持ちはずっと続いてました。それならそれで仕方ないやって。
日本に帰国した翌日、その静かさに呆然としたほど、二日目にして私は、この生き物の声と匂いで迎える朝の心地よさを、身体に馴染ませてしまっていました。
我ながら恐ろしい順応性だ。決して自然派では無いのに・・。

午前中、私達姉妹はマッサージの予約をお願いしていました。
二時間たっぷりのハーバルマッサージは500B(約1500円)。それに+100Bになってしまうけど、マッサージをしてもらう場所はせっかくだから、野外にある東屋を指定。
まだ約束の時間少し前に小雨の中東屋に向かうと、そこではすでにおばちゃん達がににこにこ待っていてくれてました。
ホシハナではタクシーもいつも、約束より前に来てくれていたなあ。
早速ごろんと横になります。
出来たばかりの建物は天井が高く広々としています
朝の風が吹き抜け、花の匂いと鳥の声に囲まれながら横たわっていると、それだけで身体の奥がほどけていく。
やがてハーブの香りが漂って、暖められたハーブボールが身体にゆっくり当てられ、リンパをほぐすように全身を強く優しく揉まれていきます。
ああ、やばいくらいに気持ちいい・・。
このマッサージは心身に深くききました。
実は、手配間違いがあって、申し込んではいなかった友人達も一緒に受ける事になったのだけれど、日本で受けてマッサージによいイメージが無かった友人にも、これはすごくよかったみたい。

とても元気になった私達は、今日もまたまたデニスと待ち合わせ。二日連続付き合ってもらいました。やつは、なんだかんだと面倒見がいい男なのです。
待ち合わせ場所はワロロット市場。
チェンマイで最もにぎやかな市場は、人ごみと独特の匂いで、入り口からすでに混沌が漂っています。
私達はお腹がぺこぺこだったので、市場見学は後にして、とりあえず昼ご飯に向かう事にしました。
この日の昼は、海老好きの姉がとても楽しみにしていたローカルレストラン。英語の看板が無く、見つけるのが困難と言われていたそここそが、この地になれたデニスの案内が無いと行き着く事が出来ないと思っていた場所。しかし、一流のツアーコンダクターにもなれそうなデニスは、あっという間にその店の前まで、私達を案内してくれました。
なのに、ああ、何て事だ。
お祭りの日だったからか、レストランはお休み!海老の黒胡椒炒めは、夢に終わりました。
一段と強くなってきた雨の中、海老もだめになり、お祭りも見られない予感にしょんぼりと歩く私達にデニスが。
「んじゃ、魚の美味い店に行きますか?」
もちろん、異論無し!
細い路地にあるデニス行きつけのその店は、店頭で大きな魚やらバナナの葉っぱにくるまれた何物かやらを焼いていて、楽しい予感に満ち満ちている。
明るいおばちゃんにメニューを見せてもらい、あれもこれもと注文していきます。
さあ、乾杯!
 
こんな風に作っているパパイヤのサラダがまずい訳が無い。いやが上でも期待は膨らむ。
料理が次々と運ばれて来ました。
魚や肉や野菜。5人で食べるから沢山味見出来て大変嬉しいです。ああ、すっかり気に入った餅米は、ここのは赤米入りなのね。
 
心なしか、餅米が♡マークに見えますね。
「いただきます!」
ぱくん。
う、うううう・・。
・・ああ。
そうか・・・。
私は、アジアご飯はハノイが一番だと信じていました。
タイ料理はそこまでじゃないよな、とも。
でも、でも。
ごめんなさい!
うまいっす!!
めちゃくちゃ、うまいっす!!!
チェンマイにはわんさかとあるから、持って生まれたこのハーブの使い方。
一工夫も二工夫もある、繊細な味付け。
そして、手の先でくにっとする餅米!!汁につけても肉とあわせても美味しい、いくらでも食べられてしまう、ああ、餅米!!
すべてとてもとても、美味しかったです。
「これはね、眼にいいです。これは◯○っていう淡水魚。このソーセージの中には○◯と○◯が入ってます」と、もうツアーコンダクターさんに見えてきたデニスは、料理の調理法や材料まで、おそるべき取材力で把握してるし。
こいつは、本物の食いしん坊だ。さすがに毎日10キロの距離を歩いて、食べ歩きをしているクレージーな食いしん坊だ。そう思いましたね。
沢山食べて、お腹いっぱいで店を出ると、そのクレイジーな食いしん坊がまたまた言います。
「生姜は好きですか?」
「うん、好きだね」
「そしたら、ちょっと喉にいい漢方のお茶飲んできましょう。お婆さんがやってる美味しい所があるんですよ」
・・・すげえよ、デニス。
ただの肉喰い野郎と思っていたけど、漢方のお茶まで勧めてくれるこの幅広さ。あんたの案内、金が取れるよ。
生姜が濃い甘い漢方のお茶を、路上でくいっと飲み干してからワロロット市場に戻ります。
待ち合わせ時間を決めて、それぞれが市場探索を開始。
私は、アジアの市場には行き馴れたはすれっからしなので、見学は早々に終わらせて廻りを散歩。
ああ、もう完全な雨だね。祭りはやらない。仕方無いや。そしたら、今日の晩ご飯どうしよう。まだお腹は空いてないな。
待ち合わせ場所に、やはり一足先に来ていたデニスと相談。
「無理だね」
「無理でしょうね」
「どうしよっか?」
「どこかで、お茶でも飲みますか」
やがてやってきた友人達も、もうお祭りは諦めた様子で、それでもしぶとく途中の店で買い物なんかもしながら、デニスが連れてきてくれたカフェの屋根があるオープンスペースに座りました。
ご飯も美味しかったし、よい物も買えた。お祭りはまだ明日があるから、晴れたらまた街に出て来よう。もし晴れなくても、旅は充分楽しかったよ。
「晩ご飯は、すごく広い鍋の店に行きましょうか」
またまた魅力的な提案を聞きつつ、カプチーノを飲んでいたら、誰かが。
「あ、一つ、上がった・・」
ああ、本当だ。
小雨模様の空に、白い気球が一つ上がっていく。
耐えきれなかった誰かが、取りあえず上げちゃえと思ったんだね。昨日もそうだったな。
「ああ、もう一つ」
私達は店の前に出てみました。
道路を面した向こう側が、小さなお寺になっていて、そこから一つまた一つと、気球は上がって行きます。
「昨日より多いね」
そして。
「・・あれ?雨、だいぶ小降りになってない?」
いや、なんなら、もう少しで雨は上がりそうだ。
気球はぽつりぽつりと、確かに増えながら飛び始めています。
もしかしたら。
「デニス、そしたら私達も、取りあえず気球上げてみたいよ」
「それじゃあ、行ってみますか」
お祭りを見る場所、いや参加する場所は、デニスが発見した穴場に連れて行ってもらう事になっていました。
まだ時間は夕方。
だけど空には、昨日とは比べ物にならない早さで、気球が上がって行く。
「あ、そこも、あれれ、結構すごいよ」
気球は空に飲まれると、オレンジの揺れる光になり、その光が、天の川みたいに列を作り始めています。
いてもたってもいられなくなって、カフェを出る事にしました。
「まだ、本番には時間があります。ナイトマーケットを通りましょう。ハチミツ屋がありますよ」
乙女土産をゲットする場所まで案内してくれる、ツアコンなら鏡と呼べるデニスの後に続き、私達はナイトマーケットを歩きます。
「うわあ・・・・」
その合間にも見上げる度に、次々と気球は空を覆い始めます。
雨も、いつの間にか上がりました。
中止でもいいやなんてとんでもない。
これを見られて、ほんとによかった・・。
ナイトマーケットを抜けて川沿いを行くと、沢山のチェンマイの人々が、思い思いの花で飾られたケーキみたいな丸い灯籠を持って、歩いていました。
ああ、これ、2コの野ケーキだ。
花と葉っぱで作ったケーキに、乗っているのはロウソク。
可愛らしい。
「私はもちろん、あっちも参加するよ・・」
そう断言しました。
地元の人でいっぱいのお寺に着くと、もうすでに、みんな大きな気球を空に放っています。
子供に老人に、少しばかりの観光客に。
「お寺で買うとちょっと高いけど、お布施だから」と、デニスから聞いていたので、50Bくらいの気球を私達もお寺の中で購入。
ああ、いよいよ飛ばせる!
5人で気球を持っていると、お坊さんやポランティアの人が、観光客にも平等に場所をくれて、ロウソクで火を着けてくれました。
「そのまま、そのまま、ぐーんと浮いてきたら、手を離す!」
私達が手を離した瞬間、結構な勢いで気球は空に上がります。
やがて廻りの光りに埋もれて、地元の人達の飛ばした光と、区別がつかなくなりました。
きれいです
ちょっと、泣きそうなほどに、きれいです。
さあ、次は、灯籠流しだ。
急いで買ってきた灯籠のロウソクに火を点けてもらい、川辺に立ちました。
小さな子供が緊張した面持ちで灯籠を抱いていて、それを撮影してもいいかと聞くと、若いお父さんはにこにこうなずき、子供に私を見るように促してくれました。
照れてこちらを見てはくれない子供と並んで、川の上にそっと灯籠をすべられます。
手を合わせて、小さな祈りもしたくなりました。
川にも光り。
罪や穢れを、空に飛ばした上に川にも流したんだから、ものすごく、私の罪は消えたと実感。
「気のせいですよ」とデニスは言いましたが。

いつまでだって見ていられる小さなお寺の喧噪を後にして、デニスの提案で私達は、観光客は到底行かない、足下の不安なぬかるんだ川のほとりを歩きました。
地元の人達がいる素朴なレストランや、灯籠を上げるカップルの幻想的なシルエットや、どこか夢の中みたいな路地を抜け、橋を渡ります。
「ここが、絶景のポイントなんです」
川に流れる光りと、空に浮かぶ光りと。
どれもがゆらゆら揺れて、すべてが無数の星になる場所。
世界とは、こんなにも美しいのだ。
世界には、花と鳥と星が、やはりあふれているのだ。
私はそんな事、ちっとも知らなかった。

チェンマイに行って、よかったです。
少し時間が経った今でも、小さな光りがずっとずっと、どこかに灯ったままです。
来年の11月、私はきっと、また、気球を上げています。











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  • 19:25
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コメント
気球は翌日、何処かに残骸が折り重なって果ててるのかな……。此の間の納品時に聞くの忘れちゃった。ソレも込みで幻想的だね…
  • ヤブウチマリ
  • 2014/11/20 3:11 AM
気球はもちろん、上がった数だけ落ちて来るんだけど、いくつか残骸見ただけで、結構スムーズに片づけられていたね。
  • ニヒル牛 ある
  • 2014/11/20 7:32 PM
片づけられていたのかな。あんなに沢山が降り落ちるのに、いたるところにしょぼくれたクラゲが落ちているわけでもないあたりにも、わたしは幻想を見たけどね。宙と高さ×広さと、光の放つ強さと。それに比べて案外、地上(にんげん)は狭い? そんな謎も生まれた。深い闇の中で思った。
  • アコ(長女)
  • 2014/11/20 9:43 PM
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石川ある
いしかわある 西荻窪 ニヒル牛・ニヒル牛2オーナー 埼玉県所沢市出身。ニヒル牛2では、今『旅の本展』開催中!

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