2月14日 ニヒル牛2
バレンタインですね。
開店準備していた私は、通りすがりの白髪老婦人に話しかけられました。
自宅が通学路にあるのだけど、そこを毎日通る中学生に対する憎しみ「あいつらはやっと卒業したと思ったら、また入学してくる」そんなのを約30分うかがって、話を聞いてくれたお礼にと、これをプレゼントされました・・。
『ハッピーバレンタイン!!』
さて、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、石川浩司がチェンマイに一か月の滞在中です。
私だってもちろん、この感は怠けますよ。いつも以上に!
ろくすっぽ食事も作らず掃除もせず、休日と言えばごろごろと録画していた映画を観るばかり、はい。くず道まっしぐら。
最近はレンタルビデオ屋にもいかず、ケーブルの映画チャンネルで適当にピックアップしときます。
映画チャンネル悪く無いです。ツタヤでは置いてなかったり片隅においやられている古い作品やマイナーな作品を意外に放送します。図書館で本を選ぶみたいな、限られた中での宝探し感があって楽しい。
てなわけで、今回は、石川留守中ごろごろ映画鑑賞ノートを!あ、ものすごくネタばれも含みます。
『クロサワ映画』
絶対に自分では選ばない作品ですね。
これは、黒沢ファンの石川が旅立つ前に「あるくん、あれはけっこう面白いよー」と言っていて、それでもまあいいやと観ないでいたら「あるくん、あれ観た観た?」って聞いてくるのね。・・・はい分かりました。観ますよ。観ますとも。
お笑い芸人さんがたくさん出ている映画。話はラブコメディ。私の大好きな、大久保さんと椿鬼奴姉さんも出てます。その二人に森三中って、ははあん。石川がこれをよいと言っていた原因は分かりましたよ。
石川の好きな女の子ばっかじゃん。これ、私にとってのイケメンパラダイス『アウトレッジ』と同じで、石川にとっての大好きなアイドルたくさん映画じゃん。
まあ、女の子がたくさん出てくる映画は嫌いじゃないです。
最後に光浦さんが本屋さんを歩くシーンがあるのですが、その時、ああ、私この人好きだなあと思いました。すごく本屋が似合ってた。
姿勢やたたずまい、今一番、品がある女の人じゃないだろか。宮藤官九朗がヒロインとしてよく起用するのが分かります。
『沈まぬ太陽』
三時間半の長い映画ですがちゃんと全部観れました。前のめりになったり姿勢を正したりはしないで、普通に座って最後まで。
日航ジャンボ墜落事故等をモデルにしたドラマチックなストーリー。こういう大作は、話しがちゃんとしているので退屈はしません。主演は正義の人で渡辺謙。この人が出ていると大作感が強まりますな。なんか眼力があって彫りが深くて、ありがたい感じ。
ちゃんと作られているし決して嫌いな作品じゃないのですが、なんというんでしょうか。ざらっとしたひっかかりとかが無くて・・。+でも−でも、どこかで予定調和が崩れて、感情が揺さぶられる瞬間が無い映画は、私はいずれ忘れてしまいます。何か、ああこれはっていうのが無いと・・って。
あ!あった!
クライマックス近く、大事な会議のシーンにガキの使いのおにいがいました!おにいが真面目な役で(エキストラだけど)!でもいつもの、あの泣きそうな顔で!思わず叫びましたよ。おにい!と、私がこの映画で一番心躍らせた瞬間でしたよ。
『金融腐敗列島』
沈まぬ太陽とある種対照的かもしれないです。私にとっては。
聞き取りづらい台詞があったり、演出もなんか不自然な箇所があったりと、アラも感じたのだけれど面白い。
金融関係の話しは苦手と、ちょっと避けていました。でも椎名桔平がいいと言われれば、とりあえず観なくてはならないのが桔平ファン。そして、はあ・・。またまたかっこよかったわあ。クセのある役がほんっとにお似合い。素敵。
ステレオタイプの悪の大物を仲代達矢がやって、主役のやはり正義の人を、どこかに弱さを感じさせる役所広司がやってます。渡辺謙の持っている大作感には冷めた気持を持ってしまうけど、役所広司の普通の人感はすんなりと気持ちを入れられる。奥さん役が風吹じゅんで、いつまでたってもどこかはすっぱで色っぽい女優さんだから、なんだかそれもいいのです。
他の役者さんも適役ぞろいでわくわくします。そして、ちょっと適役とは違った、変化球みたいな有能弁護士役のもたいまさこが、すっごくきいてました。いつもの無表情がニッと崩れる瞬間がたまらなくチャーミング。
桔平の啖呵と少しのホモセクシャルな匂い、もたいまさこが役所広司にけっこうほれているのが表情(しかも、ほんっと無表情なのに!)だけで分かるおかしさは、きっとずっと覚えているだろなと。
『さんかく』
一番最初のシーン。電車の中でフトモモもあらわな15才が、足を少し開き、口もちょっと開けて、居眠りしている箇所でもうおいおい・・。やば、すけべな映画だ!でも48才だから平気!
このあぶない子が、姉ちゃんと彼氏が同棲している部屋に数日間同居するという、まんま少年漫画の夢シチュエーション。
姉ちゃん家だし子供だからと、いっつも足出してるし、おっぱい大きいのにノーブラだったりするし、一番うわっえげつないと思ったのは、お手洗いの音。夜中にこの子のそれを聞いてしまって寝られなくる彼氏。もんもん。・・なんてすけべな映画だ!48才だから、ぎりぎり平気だけど!
キャミソールを肩からパラリと落としながら、ぼさぼさの髪で「いってらっしゃい」って。よくあるシチュエーションだけど、それを童顔のほんとに15才の可愛い巨乳女子がやっているのだから、ちょっととまどいさえします。
この子はお姉ちゃんの男に気まぐれでちょっかい出して(無自覚さと自覚の混じった、ちょっかい部分のバランスが絶妙)その男をストーカーにしてしまい、ふられた姉ちゃんは姉ちゃんで、男のストーカーになってという、どうしょもない人達の映画。
だけどそれぞれに役者がいいんです。
まず少女は、この頃はまだAKB48のメンバーで、ロリーターとして大人気だった小野恵令菜。この役、下手に脱ぐ役より恥ずかしと思う。よっぽど、肝が据わってなきゃ出来ない。現役の人気アイドルによくこんなえげつない事やらせるなあと。それだけにすっごく魅力的なんですね。私は思わず、消去する前に彼女のシーンは全部見返してしまったよ。もう一種のよく出来た殺陣を見返す気分だね。
彼氏が、今話題の高岡蒼甫。青い春もクローズも大好きな私には、もともと好印象な役者さんなんだけど、このどうしょもない男の役もよかった。ちゃんと翻弄されて愚かで、でも憎めない馬鹿でした。
そしてお姉ちゃんは、安心の田畑智子。うまいです。ストーカー部分は、彼女が一番強く描かれているからきつい印象もあるんだけど、だめだよーと思いつつもやはりなんか仕方ないよなあと。ひたむきで愚か。何よりラストシーンの笑顔がね、素晴らしいです。
こじれる関係や恋心や、しょせんみんなダメなやつなんだと。でもやはり、みんなどこかに愛らしい部分がある。キモイとか終わってるとか、そういう簡単に決めてしまう言葉と対照的な場所にあるのが、田畑智子の笑顔でした。
少し泣きました。
こういうみっけもんがあるから、映画チャンネル好き。
『日本沈没(1973年度)』
さて、本題だ。
この作品の事が書きたくて、今回映画鑑賞ノートをやってみました。
観終わった後、しばし放心。
そうか・・。と。
最初に日本沈没の兆候があらわれる海底のシーン。無音の海が怖くて、正直、それが何を意味するかなんてちっとも分からないのに、グレーの息苦しい海の底に走る、波紋の跡が恐ろしい。
子供の頃上映されていたこれは、確かパニック映画と呼ばれていたと思うんだけど、確かにCGなんか使わなくても、地震のシーンも、それこそ気持ちが蘇って来るような人々が逃げるシーンも、ものすごく生々しく怖い。
だけど、これはパニック映画ではない。
決して単純な正解なんか無い、人の生き方哲学、アイデンティティ。
「大変なことになる」そう予測する科学者を鼻で笑うように安全を強調する御用学者。
報道規制。それでも外国から漏れてしまう真実。いろんな事がやはり重なっていってしまう。
そしていよいよ日本沈没が始まって、哲学者も含んだ三人の学者が、日本人はどうするべきかを話し合い、三つにまとめる。
・もし、それを許してくれる国があるのなら、どこかで小さくても日本の再建を始める。
・ばらばらになって散って、それぞれがその地に馴染んで生きていく。
そして、三人共の一致した意見。
・このまま何もしない。日本と共に滅びる。
それを聞いた首相役が丹波哲郎。彼は目を見開いて、みるみる涙をためて、無言で泣く。
それだけで、この人の本質は、それを望んでいるんだと分かってしまう。
だけど彼は首相だから、それこそ一人でも助けるために奔走して、日本人を海外に逃がしていく。
正解かどうか分からなくたって、それこそをするべき事だと思っていたんだ。
ラストシーン、外国に散らばった日本人が、列車で移動している。
貨物車にじかに座って、みんな疲れた顔で。それは多分、ブラジル移民を始めたはるか昔の様に、貧しく、何も持たない日本人として。
少なくとも安易な希望なんか持てないラスト。
すごかったです。未来を想像するとか、そんなんじゃなくて、人の本質が何かを突き詰める真摯さと
能力があれば、こんな作品を作れるんだと。
ただ、あんな首相はどこにもいないです。
あれれ。白髪の老婦人、本日三回目の御来店。
なんでだか今、ニヒル牛2の机できのこ編んでます・・。
私に教えると。
「手先不器用だし、仕事があるんですよー」
ていうか、ええと。
・・・・・・。
まあいいや。
それではみなさん、また来週。